今回も歌をレコーディングする際のヘッドホンの音量や音のバランスについて述べたいと思います。

前回の【歌を録音する際の『ヘッドホン音量』に注意】では

  1. ヘッドホンから聞こえてくる歌や楽器の音量バランスに気を配っていない方が多い。
  2. 良い歌のためには歌いやすいオケのバランスで、自分の声が気持ち良くヘッドホンから聞こえてくることが重要。
  3. ヘッドホンの音量が大きいと音程が悪くなる。特に低くなりやすい。

ということを説明しました。

それほど歌を録音する際のモニター環境はとても大切で、ヘッドホンから聞こえてくる音に歌は左右されやすく、バランスが悪いと真の実力を発揮することが難しい場合があります。

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ヘッドホンをしていると、自分がどれくらいの声量で歌っているか分からなくなる

先日ヘッドホンの音量バランスがしっくりいっていなかったことで、上手く歌えないということがありました。

それはワンズウィルの生徒さんが自身のオリジナルアルバムを作りたいということで、ボーカルプリプロを兼ねたボーカルレッスンを行なっていた時のことです。

そこで問題になったのが以下の点です。

  • ニュアンスを出そうとすると、声量が小さくなってしまう。よって声が不安定になり節回しやしゃくりなども上手く出来ず、ピッチも悪くなってしまう。
  • 声が小さいことを指摘すると、今度は力んでしまって(声量を上げすぎて)喉を絞めてしまう。結果スムーズな発声が出来ず響きのない声になりニュアンスもなくなってしまう。

では、どうしてこの様なことになってしまったのでしょうか?

それは自分がどれくらいの声量で歌っているのか分からなくなってしまっていたことが主な原因だったんですね。

前回も述べたようにボーカルレコーディングの時は『キュー・ボックス(Cue Box)』という小型ミキサー付きのヘッドフォン・モニタリング・システムを使って、そこにヘッドフォンを差してモニターします。

Current Cue Box_sc6014
キューボックス

ここには

  • オケ2mix
  • 単独のボーカル
  • クリック
  • シンセメロ(場合によって)
  • マスター(全ての音が入った2mix)

などを送られており、ボーカリストは自分で歌いやすいようにそれぞれの音量を調整します。

この生徒さんは≪単独のボーカル≫を上げすぎていたため、

自分ではしっかり声を出しているつもりでいても、実際にはとても小さく弱い声で歌っていた

んですね。したがって声が安定せず、ふらついてしまっていたのです。

コンプやヘッドアンプによって自分の声が一定音量に聞こえる

また通常歌を録音する際は、エンジニアがコンプやヘッドアンプなどをいじって、歌の音量が一定レベルになるように調整するので当然声が小さい場合はボリュームを上げますし、大きければ下げます。

※歌を録音する際はコンプは弱めに設定するがセオリーです。

『単独のボーカル』を上げすぎていないとしても、弱く歌っても強く歌ってもある程度一定音量でモニター上は聞こえます。

すると、ボーカリストは小さい声で歌っていたとしても、ヘッドホンのモニター上では大きい声で聞こえるので、自分ではキチンと声量を出して歌っていると感じてしまいます。

ボーカル録音に慣れている方でしたら、自分がどれくらいの声量で歌っているかは把握できますが、慣れていない方だとこの様に分からなくなってしまう場合が多々あるんですね。

ではどうすれば良いのでしょうか?

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自分の声を直接聞こえるように、方耳をヘッドホンから外す。

どれくらいの声量で歌っているのかを分かりやすくするには

  • 片耳をヘッドホンから外してモニターすることで、自分の声を直接感じることが出来るようになります
  • キュー・ボックスの『単独のボーカル』の音量を上げすぎない

これだけでずいぶん違うと思います。

普段通りの実力を発揮して、自然なフィーリングで歌を録音できるように、皆さんもヘッドホンの音量バランスには細心の注意を払ってみてください。

ワンズウィル 中山 雅生