
みなさんこんにちは。ワンズウィルミュージックスクールの向井です。
今日は、歌ううえで大切な「聴くこと」について書いてみたいと思います。
特に、「歌が上手くなりたい」と思っている初心者の方に向けて書いていきます。
歌いたい人ほど、エネルギーが強い
長年、ボイストレーニングでたくさんの方を見てきた中で感じることがあります。
歌いたい人、またはすでに歌っている人には、基本的にはエネルギーの強い人が多いように感じます。もちろん、表面的にはおとなしく見える人もいます。
でも、内側には「自分を表現したい」という強い気持ちを持っている人が、とても多いんです。
そもそも昔から「歌手」という存在は、ある意味「花形」でした。多くの人に認められ、人前に立ち、自分を表現する。
今はさまざまな職業や憧れの形がありますが、それでも「歌で何かを伝えたい」という気持ちは、やはり特別なエネルギーを持っていると思います。
※花形(はながた)とは、その分野の中で、華やかで人気があり、中心的な存在のことです。
だからこそ、「聴く」ことが苦手になる
そんな「発する力」が強い人ほど、実は少し苦手になりやすいことがあります。それが、「人の話を聴くこと」です。これは別に悪い意味ではありません。それだけ「表現したい」という気持ちが強い、とも言えるからです。
つまり、普段のコミュニケーションでも、「発すること」に意識が向きすぎると、「聴くこと」が少し後回しになってしまうことがあります。
実はこの感覚、音楽や歌の世界でも、とてもよく似たことが起こるんです。特に、これから歌が上手くなりたいと思っている人ほど、「歌うこと」に意識が集中しやすい。
一生懸命歌うことに集中するあまり、そのぶん「聴くこと」にまで意識が回らない。これは、本当に多くの初心者の方に見られる状態です。
もちろん、最初はそれで当たり前なんです。歌うだけでも大変ですから。ただ、「歌」というのは、声を「出す」だけでは成立しません。
「歌」は、声を「出す」だけでは成立しません。
音楽は「アンサンブル」
音楽は、「アンサンブル(ensemble)」です。これは音楽用語ですが、もともとはフランス語で「一緒に」「調和」といった意味があります。
つまり音楽とは、本来「複数の音が重なり合って成立するもの」なんです。
例えば、歌うとき。ピアノ伴奏やカラオケ伴奏に合わせて歌うことがほとんどだと思います。
その伴奏というのは、ただ後ろで鳴っているわけではありません。実は、歌が入ってくることを前提に作られているんです。
カラオケも、ピアノ伴奏も、「ここに歌が乗る」という前提で作られているんです。
だから、伴奏をしっかり聴くことが大切です。
- どんなリズムなのか
- どんな空気感なのか
- どこに自分の声を乗せれば気持ちよくハマるのか
それを感じながら歌うことで、初めて「音楽」になっていきます。

でも初心者のうちは、どうしても「自分がちゃんと歌えるか?」に意識が集中しやすい。その結果、伴奏まで十分に聴けていないことがあります。
これはすごく自然なことなんですが、逆に言えば、「聴けるようになる」だけでも、歌はかなり変わっていきます。そして、そのためには、「聴き方」を身につけることが大切です。
上手い人ほど「聴いている」
上手い人ほど、実はよく「聴いて」います。自分の声だけではなく、伴奏やリズム、音楽全体を聴いている。
歌は「出す」だけではなく、「聴きながら歌う」ことで、大きく変わっていくんです。
では実際に、「どうすれば聴けるようになるのか?」
ここからは、僕が「聴き耳」と呼んでいるものを、僕自身の経験も交えながら、具体的にお伝えしたいと思います。
「耳が良い」とはどういうこと?
音楽業界では、よく「アイツは耳が良いからな」という言葉が使われます。例えば、次のような能力です。
- 聴いた音を正確に音程として判別できる
- ハモリやコードを聴き分けられる
- 音のズレにすぐ気づける
- 聴いたメロディをそのまま歌える
音楽を深く学んでいる人は、コードを聴いただけで「これは何のコードか?」を判別できたり、曲全体がどんな音で構成されているのかまで分かります。
そこまで行くと、かなり高度な「聴く力」が身についている状態です。
もちろん、初心者の方にそこまで求めるのはちょっとハードですよね。
ですが最低限、「自分が今どの音を歌うべきなのか?」を理解できるようになることが、とても大切です。
「聴き耳」とは?
僕は、音を聴いて判断する力のことを、「聴き耳」と呼んでいます。例えば、
- 自分の音程が合っているか?
- どこがズレているか?
- 歌のニュアンスの違い
- フレーズの細かい抑揚
こういったものを、耳で感じ取る力です。歌が上手い人ほど、この「聴き耳」が育っています。
僕の「聴き耳」が鍛えられた理由
僕自身、「聴き耳」が大きく鍛えられたのは、上京してプロの現場に入ってからでした。たくさんのレコーディング現場で仕事をする中で、自然と耳が鍛えられていきました。
特に厳しかったのが、3〜4人で同じブースに入って同時に録音する「コーラスレコーディング」です。大先輩たちに混ざって歌う現場は、本当に緊張感がありました。
各人にコーラスパートが割り振られ、「せーの」で一緒に録るので、誰か一人が間違えると録り直しになります。つまり、「大先輩に囲まれて、僕がズレると大迷惑」という世界です。
今思い出しても、かなりヒリヒリする現場でした。でも、その経験のおかげで、僕は徹底的に周りの音と調和して歌うこと、そして「聴くこと」を叩き込まれました。
「聴ける耳」はすぐには育たない
細かい音程やニュアンスを聴き取れるようになるには、ある程度時間が必要です。「聴き耳」が育つまでの明確な目安はありませんが、参考として英語のリスニングを例にすると、リスニング力が身につくまでには、次のような目安があります。
歌の場合も、「しっかり聴ける耳」が育つには、やはり時間が必要です。歌の上達を目指している方は、たくさんの歌を聴いて耳を鍛えていくことが大事です。期間については個人差がありますが、最低でも1〜2年くらいは必要だと思っています。
歌上達に欠かせない「聴き耳」は、時間をかけて育っていく。
では、実際に「聴き耳」を鍛えるには、どうすればいいのでしょうか。ここからは、特に初心者の方に向けて、その方法について具体的に書いてみたいと思います。
聴き耳を鍛える最高の方法
僕の経験上、「聴き耳」を鍛える一番良い方法は、ズバリ!「レコーディング」です。
自分の歌を録音し、それを聴き返して、修正する。これを繰り返すことです。実はこれ、ものすごく効果があります。

録音すると、普段歌っているときは気づかなかった次のような点が、驚くほど見えてきます。
- 音程のズレ
- リズムの甘さ
- 語尾の処理
- フレーズのクセ
こうした理由から、ワンズウィルミュージックスクールでは「レコーディング・レッスン」を実施しています。録音した自分の歌を聴き返すことで、「聴き耳」が鍛えられ、歌の上達にもつながっていきます。
初心者に必要なのは「正しいジャッジ」
ここで、とても重要なことがあります。それは、「何が正解で、何が間違いか」を判断できることです。
音感の良い方なら、自分で判断できる場合もあります。ですが、初心者の方の場合、自分ではズレに気づけないことがほとんどです。
だからこそ最初は、次のようなことがとても大切になります。
- 誰かに聴いてもらう
- 修正ポイントを教えてもらう
- 正解を知る
AIが学習するときも、「これが正解」「これは違う」という情報を与えながら学びます。もちろん人間も同じです。人の耳も、正しい音を学習しながら育っていきます。
「聴きながら歌う」が理想形
レコーディングを繰り返していくと、少しずつ変化が起きます。今まで「なんとなく」歌っていたものが、「聴きながら歌える」ようになってきます。これは、とても理想的な状態です。
さらに成長すると、次のようなことを歌いながら自分で判断できるようになります。
- 合っているか?
- 外れているか?
- どこでズレたのか?
ここまで来ると、歌は一気にレベルアップします。感覚的には、以前より「3段階くらい上の歌」になります。
レコーディング中でも自分の歌がよく聴こえるようになるので、歌っている最中に「ごめんなさい!ズレた!止めてください!」と、レコーディングを止めるまでになることもあります。
それだけ「感覚が研ぎ澄まされる」ということです。
初心者が特に聴くべきポイント
最後に、初心者の方に向けて、「特にここを聴いてほしい」というポイントをお伝えします。
- シャクリ
- ダウン
- トリル
さらに重要なのが、「フレーズの語尾」です。実は、上手い人ほど、この語尾の処理がとても丁寧です。この辺りをしっかり聴きながら歌うだけでも、歌の完成度はかなり変わります。
まとめ
歌が上手い人は、ただ声が良いわけではありません。自分の声だけでなく、伴奏やリズム、音程、節回しやフレーズの語尾など、歌の細かな部分まで「聴けている人」です。そして、「聴く力」は、時間をかけて育てることができます。
最初は難しく感じるかもしれません。ですが、録音して、聴いて、修正して、また歌う。これを繰り返していくことで、少しずつ耳は育っていきます。
上手に聴けるようになると、歌もそれに伴って上手くなっていきます。




