ワンズウィルミュージックスクールで<ギターコース>と<作曲 編曲 DTMコース>を担当する馬場一嘉です。私が影響を受けたアーティスト、そして「歌や音楽を創作する上で非常にためになる」アルバムについて書いてみたいと思います。

実は僕は言わずと知れた、超ユーミンマニアでして。作詞、作曲に関してはユーミンの影響を最も受けているんじゃないかと思います。

数え切れないほど愛する楽曲、アルバムがあるのですが、敢えて皆様にオススメするとなると、やはりこれでしょうか。「PEARL PIERCE(パールピアス)」松任谷由美

全ての曲、イントロや間奏、アレンジの細部に至るまでほとんど記憶しているんじゃないか、というくらい聴き込んだアルバムです。まだ高校生だったと思います。

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「PEARL PIERCE」松任谷由実

1982/6/21リリースの13枚目のアルバム。第24回日本レコード大賞ベストアルバム賞を受賞。

Musician Credits keyboards: 松任谷正隆 Guitar:松原正樹、鈴木茂 Bass:高水健司 Drums:林立夫、島村英二 Perc:斎藤ノブ、浜口茂外也 Sax:Jake H. Conception、Horns:数原晋、新井英治 Woodwind:衛藤幸雄 Strings:トマト・ストリングス・アンサンブル Harp:山川恵子 Chorus:Lilica、Leona、Clara、BUZZ、タイムファイブ、伊集加代子、和田夏代子、鈴木宏子、松任谷由実 Programming:浦田恵司

ユーミン自身、一番好きなアルバムとおっしゃっているようで、コアなファンからも人気があるアルバムです。

サウンドと歌詞の融合による「風景の描写」

アルバム1曲目を飾る【ようこそ輝く時間へ】。この曲の『リズミックでちょっと大人っぽいエレキギターのリフ』~『抑揚を抑えたブラスのフレーズ』、という流れに一気に引き込まれた記憶があります。

そして出て来る「夜風が涼しくなる頃は」という美しく、見事にメロディの譜割りと調和した歌詞。この一言でまず曲の季節感を印象付ける手法ですね。

3曲目の【ランチタイムが終わる頃】、これも秀逸です。冒頭のピアノのフレーズ、もうそれだけでその空間、季節が描写されていきます。そして同時に歌詞がリンクして物語が進行していきます。『気の早い半袖で来てみた』という、これも必殺のフレーズ。まさにユーミンらしいです。

そして5曲目の「夕涼み」が終わると、もうイントロのサウンドから冬の情景を彷彿させる6曲目の「私のロンサム・タウン」へと続いていきます。四季の折々、1日の時間軸、そういったものを1枚のアルバムに織り込んでいく。

そう、ユーミンの何がすごいって、やはりサウンドと歌詞の融合による「風景の描写」だと思います。

<季節感、温度、登場人物と物語のシチュエーション…>そういった曲の風景を、最小限の日本語と見事な行間、そしてそれを表現するアレンジメント、生演奏のバックトラックによって描いていく。昨今、打ち込み主体で作られる音楽にもそれなりの良さが有り、否定する気はありませんが、このアルバムを聴くと『生演奏の良さや素晴らしさ』を改めて認識させられます。

松任谷正隆さんのアレンジと卓越したミュージシャンたちの演奏は、ユーミンの歌詞とメロディーに息吹をもたらしていると思います。逆に、ユーミンの楽曲が、そのサウンドを必然のごとく呼び込んでいるのかもしれません。

まさにサウンドと歌詞の融合。ユーミンワールドは『楽曲・アレンジ・演奏』が三位一体になって出来あがっていると感じます。

アルバムの隅々まで聞いて、音楽の感性を磨く

10代の頃、このアルバムを何度も何度も聴きました。冒頭でも書きましたが、それぞれの楽器のフレーズまでも覚えて口ずさむ程になりました。

今振り返ってみると、多感な時期に頭に刻み込まれた『詞・曲・アレンジ』は、現在、ギタリスト・作曲家アレンジャーとして活動している僕にとって、かけがいのない財産です。

松任谷正隆さんの緻密で何とも素晴らしいアレンジ・ワーク、そしてそのサウンドを見事な演奏で表現するミュージシャン達のテクニック。1曲目【ようこそ輝く時間へ】、2曲目【真珠のピアス】のギターカッティング、太く華やかにグルーブするベース音、ストリングスやホーンセクションの絶妙な入れ具合、7曲目【DANG DANG】の美しいピアノイントロ、サビのベースラインとグルーブ。

このアルバムのミュージシャンは、今や大御所と言われている方達ばかりですが、プレイが本当に素晴らしいです。優れた生演奏だからこそ邪魔にならないし、試行錯誤を重ねた音色でプレイしてるから、結局楽曲に必要な音色なんですよね。良いミュージシャンはやはり、出音・フレーズが素晴らしい。

今や、レコードどころかCDすら存在、存続が危ぶまれる今日この頃ですが、そういうアルバムを大切に大切に隅々まで聴いて、音楽に対する感性を磨いた時期があって良かったんじゃないかと思っています。

そして後にまた違うコンテンツで語ろうと思いますが、小沢健二さんの一連の作品にも同じものを感じます。特に「Eclectic」という4枚目のアルバムには、そういった豊潤なサウンドの美しさがある。琴線に触れるサウンド、音色、フレーズ、言葉、それはもう理屈ではありません。。

これ好き、というひとつひとつを繋いで紡いで、1つの曲に仕上げる。それがより多くの人に共感を得た時、”良質なヒットは生まれる” んじゃないかと思います。

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アルバム試聴


※バーニー・グランドマンによるリマスタリング盤

全曲試聴する ⇒ 松任谷由美【PEARL PIERCE】