こんにちは、ワンズウィルミュージックスクールの中山です。当校の【Pro Tools 超初心者コース】に通う生徒さんに、Pro Tools 購入にあたり必ずと言っていいほど相談されることは、「いったいどの Pro Tools を買えばいいの?」ということです。
そうなんです、Pro Tools は買い方が少しややこしいんですね。ネットをみると、「Pro Tools with Annual Upgrade」「Annual Upgrade Plan Renewal」など、同じような商品名の Pro Tools がズラリと並んでいるし、購入プランの選択肢もたくさんあったりと、お手上げ状態になるのも無理ありません。
発売元のAvidも、ちょくちょく価格や条件を変えたりしますので、私達プロでも分からないことが多かったりします。
そこで本日は、2017年7月時点での「購入プランを整理」し、「どのプランがお得で、損なのか?」 を検証してみたいと思います。また「実売価格はいくらなのか?」についても調べてみます。
- Pro Tools を新規で購入したい方
- 既にPro Tools をお持ちで、アップグレードしたい方
は必見です。※Pro Tools Native の話に限定させて頂きます。
Pro Tools の新規購入プラン
現在、Pro Tools の新規購入プランは大きく分けて2通りあります。(※アカデミック版もありますが、これは後ほど記述します。)
- 永続ライセンス
- 使用期限のないライセンスで、Pro Tools は永続的に使用可能(所有)
- サブスクリプション・ライセンス
- 1ヶ月または1年単位の契約で、Pro Tools を使用する権利を購入
簡単に言うと、「永続ライセンス」を買えばずっと使い続けることができ(所有する)、「サブスクリプション・ライセンス」は、金額を支払った期間だけ使用できます。(※例えば1年間のライセンスを購入した場合は、2年目以降には再び同じものを購入しないと使えません。)
また「永続ライセンス」には1年間のアップグレード・プランが付属します。つまり、購入から1年以内に最新バージョンが出たら、無償でアップグレードできます。さらにiLokも同梱します。
永続ライセンス Pro Tools with Annual Upgrade |
月間/年間サブスクリプション Pro Tools – Annual Subscription |
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実売価格 | 約60,000円(税込) 2017年7月現在 |
年間 約30,000円(税込) 2017年7月現在 |
アップグレード | 1年間無償 | 常に最新Verが利用可能 |
ライセンス | 最新バージョンのみ(PT10,11は付属せず) | 最新バージョンのみ(PT10,11は付属せず) |
iLok 3 | 付属 | 付属 |
アカデミック版
学生、教職員の方が特別価格で購入できる製品で、かなりお安くお得です。永続ライセンス版は約半額ちょい、サブスクリプション版は、なんと60%OFFの価格で購入できます。しかもこのアカデミック版には、通常版にはない「年間サポート」が付属しているので、その分だけお得になっています。
永続ライセンス Pro Tools with 12 Months Upgrades and Support – Student/Teacher |
年間サブスクリプション Pro Tools – Annual Subscription – Student /Teacher |
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実売価格 | 約37,000円(税込) | 約12,600円(税込) |
特に、これから Pro Tools でDTMを始めてみたい学生の皆さんは、この特典を是非利用したいですね。
ただ、正真正銘の学生でないと購入してもライセンスが発行されませんので、ご注意ください。購入後に、資格を証明する書類をAvidに提出する必要があります。
アップグレード版について
既にPro Tools をお持ちのユーザー(永続ライセンスにて購入)が対象になるアップグレード版には、Renewal(更新版)とReinstatement(再加入版)の2種類があります。
1年間のアップグレード・プランが『有効か、期限切れか』で、購入する製品が変わってきます。
新規購入した方で、いずれはアップグレードを考えている場合、大切なポイントになってきます。
- Annual Upgrade Plan Renewal(更新版)
- 1年間のアップグレード有効期間中に、プランを1年間更新(継続)される方
- Annual Upgrade Plan Reinstatement(再加入版)
- 1年間のアップグレード期限が切れた方が、再加入するプラン
例えば、常に最新版の Pro Tools を使用したい方は、アップグレードプラン有効期限内に、毎年 Renewal(更新版)を購入しつつければいい訳です。
また、アップグレード・プランを更新しなかった(有効期間が切れてしまった)場合でも、Reinstatement(再加入版)を購入すれば、最新版にアップグレードできるということになります。
※もちろん、アップグレードしなくても、Pro Tools は使い続けることはできます。(永続ライセンスを購入するということは、所有を意味するので。)
Annual Upgrade Plan Renewal(更新版) | Annual Upgrade Plan Reinstatement(再加入版) | |
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実売価格 | 約11,000円(税込) | 約35,000円(税込) |
対象者 | アップグレード・プラン有効期間内の方 | アップグレード・プラン期限切れの方(Pro Tools 9 以降を所有の方) |
「永続ライセンス」と「サブスクリプション」のどちらがお得か?
「サブスクリプション」は「永続ライセンス」の約半額ですが、毎年お金を払い続けなければなりません。となると、単純に3年以上使うのであれば「永続ライセンス」の方が断然お得になります。
ただ「永続ライセンス」も常に最新バージョンを使うには、毎年アップグレード・プラン(Annual Upgrade Plan Renewal(更新版))を購入しなければなりません。
その場合、どちらがお得か?比較してみたいと思います。
常に最新バージョンを使う場合の比較
永続ライセンス+アップグレード(更新版)
|
年間サブスクリプション
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1年目
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60,000円 | 30,000円 |
2年目
|
71,000円 | 60,000円 |
3年目
|
82,000円 | 90,000円 |
4年目
|
93,000円 | 120,000円 |
5年目
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104,000円 | 150,000円 |
6年目
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115,000円 | 180,000円 |
7年目
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126,000円 | 210,000円 |
※ 実売価格で計算<永続ライセンス:60,000円 | Annual Upgrade Plan Renewal(更新版):11,000円 | 年間サブスクリプション:30,000円>
もう一目瞭然ですね。
3年以上使うのであれば、やはり「永続ライセンス」の方がお得です。
2つの「アップグレード・プラン」の比較
アップグレード・プランには、以下の2つがあることはすでに述べました。
では、どちらがお得なのか?ポイントになるのは
アップグレードするタイミングをいつにするか?
になります。それによって支払う金額が随分と変わって来てしまうので、『常に最新版のPro Tools が本当に必要なのか?』『自分にとって必要な新機能は何なのか?』をよ~く考えてアップグレードする必要が出てきます。
常に最新バージョンの Pro Tools は必要か?
Annual Upgrade Plan Renewal(更新版)は、常に最新版の Pro Tools が使用できるという点は魅力的に感じます。
ただ、常に最新版は必要なのでしょうか?
- 最新版はバグが多く、安定しない
- 最新版にアップグレードすると、それまで使用していたサードパーティー製のプラグイン等が使用できない場合がある
という理由で、多くの Pro Tools ユーザーはアップグレードに慎重になり、二の足を踏んでいるのも事実です。
特にプロのレコーディング現場では、第一に安定性が求められます。Pro Tools が変な挙動をしたり、レコーディング中に突然落ちて作業が止まってしまうなどあってはいけません。
私は現に、あるメジャーなレコーディングスタジオで、ボーカル録音中に Pro Tools が止まってしまったことが何度かありました。このスタジオが Pro Tools 12にバージョンアップしてすぐぐらいの時だったと思います。やはり初期の Pro Tools 12 は安定感にかけていました。(現バージョンは12.7になっているので安定していますが)
このような理由で、プロのレコーディングスタジオでは一世代前のバージョンを使うことも多いですし、最新版がリリースされてしばらくたってから、アップグレードする場合が多いです。2017年7月現在、いまだに Pro Tools HD 11(2013年発売) を使用するスタジオも少なからずあります。
アップグレードする周期
では、どのくらいの周期でアップグレードするのが適当なのでしょうか?今までの流れからみて、Pro Tools のメジャーアップデートは2年~3年に1度という間隔です。
ただ、アップグレードしたからと言って機能が劇的に向上することは多くはなく、旧バージョンでも何ら問題なく曲作りやレコーディング作業ができます。現に Pro Tools 11 → Pro Tools 12 では、「これはかなり進化したな」という目立ったものありませんでした。
となると以下の様に、自分が「この機能は欲しい」というものが追加された時に、アップグレードするのが良いのではないかと思います。
- 32ビットで高音質なレコーディングをしたい、クリップゲインは便利だから欲しい ⇒ Pro Tools 10 にアップグレード
- 大容量メモリーを使用できる64ビット環境や、オフライン・バウンス機能が欲しい ⇒ Pro Tools 11 にアップグレード
Pro Tools 11 の発売がもう4年も前の2013年ですから、これらを考慮すると
3~4年に1度、アップグレードするという考えで十分だと思います。
特にプロのレコーディングエンジニアやアレンジャーでもない限り、もっと長いタームでもいいかもしれません。
アップグレード(更新版)と(再加入版)のどちらが得か?比較
では2つの「アップグレード・プラン」を、使い続けた年数別に比較してみましょう。
毎年(更新版)を購入しアップグレードする場合と、3年間使い続けた後(再加入版)でアップグレードする場合
永続ライセンス+
アップグレード(更新版) |
永続ライセンス+
アップグレード(再加入版) |
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1年目
|
60,000円 | 60,000円 |
2年目
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71,000円 | 60,000円 |
3年目
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82,000円 | 60,000円 |
4年目
|
93,000円 | 95,000円 |
5年目
|
104,000円 | 95,000円 |
6年目
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115,000円 | 95,000円 |
7年目
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126,000円 | 130,000円 |
8年目
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137,000円 | 130,000円 |
※ 実売価格で計算<永続ライセンス:60,000円 | Annual Upgrade Plan Renewal(更新版):11,000円 | Annual Upgrade Plan Reinstatement(再加入版):35,000円>
毎年(更新版)を購入しアップグレードする場合と、4年間使い続けた後(再加入版)でアップグレードする場合
永続ライセンス+
アップグレード(更新版) |
永続ライセンス+
アップグレード(再加入版) |
|
1年目
|
60,000円 | 60,000円 |
2年目
|
71,000円 | 60,000円 |
3年目
|
82,000円 | 60,000円 |
4年目
|
93,000円 | 60,000円 |
5年目
|
104,000円 | 95,000円 |
6年目
|
115,000円 | 95,000円 |
7年目
|
126,000円 | 95,000円 |
8年目
|
137,000円 | 95,000円 |
9年目
|
148,000円 | 130,000円 |
10年目
|
159,000円 | 130,000円 |
現在の価格形態ですと、3~4年間同じバージョンを使い続けた後に、Annual Upgrade Plan Reinstatement(再加入版)35,000円を購入し、アップグレードするのが得策のような気がします。
ただ、常にPro Tools の最新版にアップグレード出来るという点では、Annual Upgrade Plan Renewal(更新版)を毎年購入しておくという選択肢はありです。金額はさほど変わりありませんので。
どのプランで買うのが一番お得なのか
以上のことを踏まえ、どのプランがお得なのか?まとめてみたいと思います。「アップグレード」の周期を考慮し、「永続ライセンス」と「サブスクリプション」を比較します。
- 永続ライセンス + アップグレードプラン(再加入版)
最初に永続ライセンスで新規購入し、3年間使い続けたあと、Annual Upgrade Plan Reinstatement(再加入版)でアップグレードする
これがもっとも対費用効果の高い選択になります。
以下の表でも、確信してみて下さい。
永続ライセンス+
アップグレード(更新版) |
永続ライセンス+
アップグレード(再加入版) |
年間サブスクリプション
|
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1年目
|
60,000円 | 60,000円 | 30,000円 |
2年目
|
71,000円 | 60,000円 | 60,000円 |
3年目
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82,000円 | 60,000円 | 90,000円 |
4年目
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93,000円 | 95,000円 | 120,000円 |
5年目
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104,000円 | 95,000円 | 150,000円 |
6年目
|
115,000円 | 95,000円 | 180,000円 |
7年目
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126,000円 | 130,000円 | 210,000円 |
8年目
|
137,000円 | 130,000円 | 240,000円 |
9年目
|
148,000円 | 130,000円 | 270,000円 |
10年目
|
159,000円 | 165,000円 | 300,000円 |
11年目
|
160,000円 | 165,000円 | 330,000円 |
12年目
|
171,600円 | 165,000円 | 360,000円 |
- アップグレードの周期は3年タームで問題ない点を考慮すると、永続ライセンスを購入後、Annual Upgrade Plan Reinstatement(再加入版)を購入するのが一番お得な選択。
- アップグレード(更新版)と(再加入版)の支払い金額はさほど変わらないので、常に最新版の Pro Toolsを使えるという点で、Annual Upgrade Plan Renewal(更新版)を毎年購入するアドバンテージはある
- ずっと(一生) Pro Tools を使い続ける意志のある方は、サブスクリプションは損をする。
- 数年内に、他のDAWに乗り換える可能性のある方は、年間サブスクリプションがお得
その人それぞれの考え方で、何が得なのか?は変わってきます。Pro tools 購入時の参考になれば幸いです。