カラオケでマイクを持って歌う女性と、歌が走る原因と直し方を伝えるアイキャッチ画像

全面改訂
この記事は内容を全面的に見直し、歌が走る原因と直し方について、図解や具体的な解説を加えて再構成しました。

歌っていると、こんな経験はありませんか?

  • カラオケで、気づくと伴奏より早く歌ってしまう
  • 自分ではリズムに合っているつもりなのに、「歌が走っている」と言われる

「なぜカラオケで歌が走ってしまうのか」「伴奏より早く歌ってしまうのをどう直せばいいのか」と悩み、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

歌が走ってしまうのは、単に「リズム感がないから」とは限りません。音符や休符の長さ、ブレスの取り方、曲のリズムの捉え方、歌い出すタイミングなど、さまざまなことが関係しています。

特に初心者の方は、歌が走っていても、自分では気づかないことがほとんどです。

ただ、歌が走ってしまうのは初心者に限ったことではありません。実は、プロでも歌のタイミングが早くなってしまうことはよくあります。

私はこれまで、多くのプロのアーティストのレコーディングやボーカルディレクションに携わってきましたが、そうした場面を何度も見てきました。

この記事では、そうした経験をもとに、歌が走ってしまう主な原因と直し方を分かりやすく解説します。自分の歌のどこを確認し、どう修正していけばよいのかが分かってくるはずです。

歌が走るとは?

まずは、「歌が走る」とはどのような状態なのかを確認しておきましょう。

歌が走るとは
カラオケなどの伴奏全体に対して、歌のタイミングが早くなることです。

フレーズの最初から早い場合もあれば、入りは合っていても、途中から歌が前へ出てしまう場合もあります。

カラオケで「歌が走っている」「リズムが前にずれている」と指摘されるのは、この状態です。「早取り」と表現されることもあります。

歌っている時は、自分の歌が走っていることに気づきにくい

歌っている最中は、音程、歌詞、声の響き、感情表現など、いろいろなことに意識が向きます。

特に初心者の方は、自分の声を出すことに精いっぱいで、自分の歌を聴いているつもりでも、その歌を正確には聴けていないことが少なくありません。

そのうえ、カラオケなどの伴奏と自分の歌のタイミングまで聴くとなると、さらに難しくなるものです。

実際のレコーディングレッスンでは、生徒さんと次のようなやり取りになることがあります。

講師
講師

今の歌、タイミングが早かったよね

と伝えると、
生徒さん
生徒さん

そうですか? 音程は低かったですよね

このように、音程について答える生徒さんは少なくありません。

そこで、録音した歌を一緒に聴きながら、どの部分で歌が走っているのか、なぜそうなっているのかを説明すると、

生徒さん
生徒さん

あ~っ、本当だ。走っていますね。

このとき初めて、自分のタイミングが早くなっていたことに気づきます。

音程は本人も気にしているため、合っているかどうかに意識が向きやすいものです。

一方、歌のタイミングを判断するには、自分の声だけでなく、伴奏と自分の歌の位置関係まで聴く必要があります。

そこまで聴けていないと、歌が走っていても自分では気づきにくいものです。

歌が走ってしまう主な原因

歌が走る原因は一つではありません。音符や休符の長さ、ブレスの位置や取り方、曲のリズムの捉え方、フレーズに入るタイミングなど、さまざまなことが関係しています。

それでは、主な原因をそれぞれ見ていきましょう。

音符や休符の長さが本来より短くなっている

音符を本来より短く歌っている

歌が走る原因として特に多いのが、メロディー本来の音符の長さより短く歌っていることです。

音符を短く歌うと、その分、次の音を正しい位置より早く歌い出してしまいます。これがフレーズの中で繰り返されると、歌い出しは合っていても、途中から歌が伴奏より前へ出ていきます。

音符を短く歌うとなぜ走る?
音符を短く歌う
↓
次の音を正しい位置より早く歌い出す
↓
歌が走る

例えば、「タ・ターン・タン」というリズムのフレーズがあったとします。本来伸ばすべき「ターン」が短くなると、その次の「タン」が早く出てしまい、歌が走ってしまいます。

正しい長さで歌った場合と、短く歌った場合を図で比べてみましょう。

音符を正しい長さで歌った例と、短く歌うことで次の音が早くなり、歌が走る例を比較した図

このほか、フレーズの語尾を、その音符本来の長さより短く歌った場合も、次のフレーズへ早く入りやすくなります。

そもそも、音符には、それぞれ本来決まっている長さがあります。音符を正しい長さで歌うには、節回しも重要です。

例えば、メロディーに合った節回しができず、まっすぐ歌ってしまうと、音符を十分に伸ばせず、本来より短く歌ってしまうことがあります。

ここでいう「まっすぐ歌う」とは、自然な節回しがほとんどなく、音程をまっすぐになぞるような歌い方です。

まっすぐ歌ってしまう背景
  • リリースされている楽曲の影響
    ボーカルの音程や節回しが必要以上に修正された歌を普段から聴き、その歌い方をお手本にしてしまう。
  • カラオケ採点の影響
    高得点を目指して音程を正確に合わせることを優先するあまり、自然な節回しがおろそかになってしまう。

このように、まっすぐ歌うことは、単に歌の表現だけでなく、音符の長さにも影響し、歌が走る原因にもなるのです。

なお、こうした節回しをほとんどせず「まっすぐな歌い方」をする人が多い理由については、こちらの記事で取り上げています。

休符の長さを本来より短く取っている

同じことは、休符の長さにも当てはまります。フレーズ内の休符を本来より短く取ってしまうと、その分、休符の後の音を本来より早く歌い出してしまいます。

休符を短く取るとなぜ走る?
休符を短く取る
↓
休符の後の音を正しい位置より早く歌い出す
↓
歌が走る

休符の長さについても、図で確認してみましょう。

休符を正しい長さで取った例と、短く取ることで休符の後の音が早くなり、歌が走る例を比較した図

このように、音符を本来より短く歌ったり、休符を本来より短く取ったりすると、タイミングが前へずれるだけでなく、本来あるはずの歌の「間」も失われます。
その結果、歌のノリが悪くなり、グルーブ感も失われます。

息継ぎ(ブレス)の位置や取り方が適切でない

息継ぎ(ブレス)は、歌のタイミングに直接影響します。息継ぎが原因で歌が走る場合は、次のような点に問題があります。

息継ぎで歌が走る主な原因
  • ブレスをする位置が適切でない
  • ブレスの長さが適切でない
  • ブレスのタイミングが曲のリズムに合っていない
  • 息を吸うスピードが曲のテンポに合っていない

ブレスの位置や長さによるタイミングのずれを、図で見てみましょう。

適切な位置と長さでブレスを取った例と、ブレスの位置が早く長さが短くなることで歌が走る例を比較した図

ブレスの位置や取り方が曲のリズムやテンポに合っていないと、歌に必要な「間」が作れず、歌が走る原因になります。反対に、歌い出しが遅れることもあります。

曲のリズムを捉えられていない

特に、初心者の方や歌が苦手な方に多いのが、歌う曲が8ビートなのか16ビートなのか、跳ねたリズムなのかなど、曲のリズムを十分に理解しないまま、あるいは意識せずに歌っていることです。

ただ、こうしたことは、歌に自信がある方でも意外とあります。

また、知識として理解していても、伴奏に合わせて実際にリズムを取ることができていない場合もあります。

曲には、それぞれ特有のリズムの流れやノリがあります。シャッフルやスウィングのような跳ねたリズムもあれば、8ビートでもシンコペーションが多く入るなど、リズムは曲によってさまざまです。

曲のリズムを十分に捉えられないまま歌うと、音を出すタイミングや音の長さ、歌の「間」の取り方が曖昧になり、歌のノリやグルーブも崩れやすくなります。

その結果、伴奏とのタイミングが合わず、歌が走ってしまいます。

特に、8分音符や16分音符など、細かい音符が続く部分では、次の音を歌うタイミングまで待てず、歌が伴奏より前へ出てしまうことがあります。

フレーズの入りが本来の位置より早くなっている

また、フレーズの最初の音を本来より早く歌い始めることも、歌が走る原因になります。

その主な要因を、これまで見てきた内容からまとめると、次のとおりです。

  • 音符を短く歌う
  • 曲のリズムを十分に捉えられていない
  • 休符を短く取る
  • ブレスの位置や取り方が適切でない

このように、曲のリズムやノリを感じていないことや、次のフレーズまでに必要な「間」が短くなることで、フレーズの入りが本来より早くなります。

これを繰り返すと、曲全体で歌が走ってしまいます。それだけでなく、歌のグルーブ感もなくなってしまいます。

次の図は、フレーズの入りが本来より早くなる例です。

フレーズを正しい位置から歌い出した例と、本来より早く歌い出すことで歌が走る例を比較した図

歌が走るのを直す方法

メトロノームを使ったり、手拍子で拍を取ったりするようなリズム練習もありますが、実際に歌う曲の中で、リズムの取り方やブレス、音符の長さなどを確認しながら練習する方が、歌のタイミングを直すには効果的だと考えています。

録音した歌を聴き、自分の歌の現在地を知る

歌が走るのを直すためには、まず自分の歌が伴奏に対してどのようなタイミングになっているのかを知る必要があります。

そのために有効なのが、自分の歌を録音して聴くことです。

録音した歌を聴くときは、自分の声だけを聴くのではなく、カラオケなどの伴奏に対して、どのフレーズで歌のタイミングが早くなっているのかを確認します。

録音した歌を伴奏と聴き比べることで、自分では気づかなかったタイミングのずれも見えてきます。

自分の歌が今どのような状態にあるのか、いわば「現在地」を知ることが、走りを直すための第一歩です。

録音した自分の歌をヘッドホンで聴き、DAWの波形を見ながら伴奏と自分の歌のタイミングを確認する女性

ただし、録音した歌を正しく判断するには「聴く力」も必要です。これについては、後ほど詳しく説明します。

音符を正しい長さで歌い、休符も正しい長さで取る

歌が走っている箇所が分かったら、音符を正しい長さで歌えているか、休符も正しい長さで取れているかを1フレーズずつ細かく確認していきます。

そして、本来より短くなっている音符や休符を、正しい長さに修正します。

実際、私がボーカルレコーディングで良いテイクを選ぶときも、歌のタイミングを修正(エディット)するときも、音符の長さや休符の取り方は必ず確認するポイントです。

これまでレコーディングでボーカルディレクションをしてきた経験から言えるのは、歌の「間」の取り方ひとつで、歌のノリやグルーブは大きく変わるということです。

そして、歌の「間」の取り方には、アマチュアとプロの違いがはっきり表れます。

適切な位置で、適切な長さのブレスを取る

その場しのぎでブレスをするのではなく、どこで息を吸うのかをあらかじめ決め、適切な位置で、適切な長さのブレスを取るようにします。

歌詞にブレスをする位置を書き込んでおくのも一つの方法です。実際にプロのボーカリストでも、歌詞にブレス位置を書き込んで確認している方は多くいます。

歌うときは、次の点を確認します。

  • 息を吸う位置は適切か
  • 曲のリズムに合ったタイミングで息を吸えているか
  • ブレスの長さは適切か
  • 息を吸うスピードが曲のテンポに合っているか

これらが曲のリズムやテンポに合うことで、次の歌い出しまでに必要な「間」が生まれ、歌が走りにくくなります。

そして、歌に必要な「間」と、音符本来の長さに合った節回しが組み合わさることで、ノリやグルーブが生まれます。

曲のリズムを理解し、実際にリズムを取ってから歌う

まずは、その曲がどんなリズムなのかを確認してみましょう。例えば、次のような点です。

  • 8ビートか16ビートか
  • シャッフルやスウィングなど、リズムが跳ねているかどうか

次に、実際に曲を聴きながら、手拍子などでリズムを取ってみます。頭で理解するだけでなく、曲のリズムやノリを自然に体で感じられるようになることが大切です。

そのうえで曲を歌い、伴奏に対して自分の歌がどの位置にあるのかを確認します。

曲のリズムを捉え、その中で歌えるようになることが、歌が走ってしまうのを直すことにつながります。

ドラムやギター、キーボードを背景に、8ビート・16ビート・シャッフル・スウィングなどの曲のリズムを理解し、リズムやノリを体で感じながら歌うことを表したイメージ図

自分の歌を録音し、修正を繰り返して「聴く力」を育てる

カラオケなどで歌が走ってしまうのを直すには、まず自分の歌を正しく聴き分けられるようになることが大切です。

そのためにも、自分の歌を録音して聴き返すことは欠かせません。

ただ、特に初心者のうちは、録音した歌を聴いて「なんとなく違う」とは感じても、伴奏に対して自分の歌がどこで早くなっているのか、何が原因で走っているのかまで正しく判断することは簡単ではありません。

そこで必要になるのが、自分の歌を正しく聴き分ける「聴く力」です。

私がこれまで多くのボーカリストをレコーディングしてきて感じるのは、歌が上手いボーカリストほど、この「聴く力」が高いということです。

そして、この「聴く力」は、歌が走るのを直すためだけでなく、歌そのものを上達させるうえでも欠かせません。

ここでいう「聴く力」とは、生まれつきの聴力のことではありません。

「聴く力」とは

自分の歌を聴いて、音程だけでなく、リズムやタイミング、歌の「間」、音の長さ、節回し、響き、息づかいなどがどうだったのかを聴き分ける、いわば「歌を分析できる能力」です。

つまり、自分の歌を客観的に捉える力でもあります。

ただ、この「聴く力」は、録音した歌をただ何度も聴いていれば身につくというものではありません。

自分の歌の問題点を自分だけで正しく聴き分けるのは、難しいものです。

そのため、最初のうちは、歌を正しく聴き分けられる人に録音した自分の歌を聴いてもらい、どこがどう違うのかを具体的に指摘してもらうことが大切です。ボイストレーニングの講師と一緒に録音を聴きながら確認するのも、一つの方法です。

そうした指摘をもとに、何ができていて、何ができていないのかを正しく判断し、それを修正する。その繰り返しによって、少しずつ自分の歌を正確に聴けるようになっていきます。

この「聴く力」が育ってくると、伴奏に対してどこで歌が走っているのかに気づけるようになり、音符や休符の長さ、ブレス、曲のリズムなどから原因を見つけ、修正できるようになっていきます。

「聴く力」が育つと
歌が走っている箇所に気づける
↓
歌が走る原因を見つけられる
↓
原因に合わせて修正できるようになる

レコーディングスタジオで歌を録音する女性と、自分の歌を正しく聴き分ける「聴く力」の大切さを伝えるイメージ画像

これは、私がこれまでメジャーレコード会社のアーティストのレコーディングをしてきた中でも強く感じてきたことです。

特に新人アーティストの場合、最初のうちは録音した自分の歌を聴いても、何ができていて、何ができていないのかを自分では判断できないことがよくありました。

そこで私は、録音した歌を一緒に聴きながら、できているところ、できていないところを一つずつ丁寧に説明していきました。

ディレクター
ディレクター

今の歌は走っていたよね。だから本来あるはずの歌の「間」がなくなって、グルーブ感も失われているよ

と伝えると、少し不満そうな表情で、
アーティスト
アーティスト

そうですか? 自分ではそんなに走っている感じはしないんですけど……

最初のうちは、私が何を言っているのか十分に理解できず、こうした反応をすることもありました。

それでも、当時はアルバム制作で何曲もレコーディングすることが多かったため、録音して、聴いて、修正することを繰り返すうちに、少しずつ自分でも違いを聴き分けられるようになっていきました。

そして次のアルバムのレコーディングで会ったときには、歌が見違えるように良くなっていたアーティストも少なくありませんでした。

この「聴く力」については、こちらの記事でも詳しく取り上げています。

まとめ

歌が走ってしまう原因と、その直し方について解説してきました。最後に、この記事のポイントをまとめます。

歌が走るのを直すポイント

  • 歌っているときは、自分の歌が走っていることに気づきにくい
  • 歌が走る主な原因には、音符や休符の長さ、ブレスの位置や取り方、曲のリズム、フレーズの入りなどがある
  • まずは録音した歌を聴き、どこで歌が走っているのかを確認し、その原因を見つける
  • 原因が分かったら、実際の曲の中で確認しながら修正する
  • 自分の歌を録音して聴き、修正を繰り返すことで、自分の歌を正しく聴き分けられる「聴く力」が育つ
  • 「聴く力」が育つと、歌が走っている箇所に気づけるようになり、原因を見つけて修正できるようになる

ただ、自分の歌が走っているかどうかを、自分だけで客観的に判断するのは簡単ではありません。録音して聴き返しても、タイミングのずれに気づけないことがあります。

そのような場合は、第三者に歌を聴いてもらい、どこで歌が走っているのか、何が原因なのかを客観的に確認してもらうことも大切です。

ワンズウィルのボイストレーニングでは、実際に歌を録音しながら、リズムやタイミング、音符の長さ、ブレスなどを一つずつ確認していきます。自分では気づきにくい歌の走りや歌い方の問題点も、録音した歌を一緒に聴きながら確認できます。