前回の「腹式呼吸」完全マスター編 ① ~腹式呼吸ってなに?~では、よく言われる腹式呼吸について「腹式呼吸とは一体何だろう?」「腹式呼吸が良いとされる理由」「体のどの部位がどういう動きをしているのか?」などを詳しく説明しました。

今回は「実際に腹式呼吸を行うための初歩的なトレーニング(練習)方法・やり方」について書きたいと思います。

腹式呼吸の初歩的トレーニングの効果・意味
・腹式呼吸で使う筋肉群をしなやかに活性化させる
・横隔膜とその周辺筋肉を鍛える

第一の目標は、まず横隔膜やそれに付随する腹筋群の動きの活性化です。

その後、慣れてきて回数を増やす事で筋肉が鍛えられます。
ただし、筋肉を強固に鍛えあげると言うよりは、

横隔膜と周辺筋肉がしなやかに動くようにトレーニングすることが目的

です。

    「腹式呼吸」初歩トレーニング ~5つの工程


  1. 体全体の力を抜き、仰向けに寝そべる
  2. お腹に風船が入っているイメージをもつ
  3. ゆっくり息を吐く(風船がしぼむ)お腹が凹む
  4. 空気を全部吐き切ったら、ゆっくり息を吸う(風船が膨らんでゆく)お腹が膨らむ
  5. 空気が吸えなくなくなったら(3)に戻る

分かりやすく5つの工程にまとめてみました。では、ひとつづつ説明を加えて行きます。

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Step1 体全体の力を抜き、仰向けに寝そべる

まず、どの姿勢で行うか? ですが、初心者にとって一番やりやすい体勢は、仰向けに寝そべる事でしょう。

立位姿勢(いわゆる立っている状態)では、リラックスしているつもりても、実はバランスを取るために下半身や体幹筋などに微妙に力がかかっています。

最初の段階では、お腹に意識を集中するため、体全体の力を抜き仰向けに寝そべってください。

Step2 お腹に風船が入っているイメージをもつ

腹式呼吸とは、簡単に言うと「息を吸った時にお腹が膨らむ呼吸法」です。

分かりやすくイメージするために「お腹の中に風船が入っているイメージ」を持ってください。息を吸うとその風船が膨らみ、吐くと風船がしぼむイメージで行います。

腹式呼吸はお腹の中に風船が入っているイメージで呼吸する

Step3 ゆっくり息を吐く(風船がしぼむ)⇒ お腹が凹む

ゆっくり息を吐くことから始めましょう。

だいたい10秒程度かけて、お腹の風船にある空気を全部吐き出すつもりで行なってください。風船がしぼむのでお腹は凹んで行きます。

この時、吐き出す空気は口から。そして、口を少しすぼめて「フー」や「スー」など空気に音を付けてください。

これは「風船の中の空気が外に出ているんだよ」と言うことを強く自己認識するためです。

Step4 空気を全部吐き切ったら、ゆっくり息を吸う(風船が膨らんでゆく)⇒ お腹が膨らむ

お腹が凹んで「コレ以上吐き出せない」くらい空気を吐き切ったら、今度は空気をゆっくり吸い込みます。この時は鼻から。これも10秒程度かけてゆっくり。

同時にお腹の風船が膨らみだして、どんどん大きくなります。凹んだお腹がもどり、さらにさらに膨らんで行きます。

Step5 空気が吸えなくなくなったら(Step3)に戻る

「もうコレ以上吸えない」となったら(Step3)に戻り、「フー」や「スー」など空気に音を付けてゆっくり息を吐き出してください。

この繰り返しを初心者の場合3回程度から始め、慣れてきたら徐々に回数を増やすのが良いでしょう。

● ポイント ●
空気を吐き出す時も、吸う時も、動くのはお腹だけです。
お腹の風船だけが大きく膨らんだりしぼんだりします。
お腹以外の部位はほとんど動かない状態にすることが重要です。

今まで胸式呼吸専門で来られた方は、多くの方が、胸部も同時に動かしてしまいます。例えば、

  • 呼吸と同時に胸が上下する
  • 肩が動くなどしてしまう

これらの動きがあまり大きいと、トレーニングの趣旨を逸脱してしまいます。

最初のうちは、動きを確認するために、信頼出来る人に見ていてもらうのが一番ですが、そう出来ない場合は、以下の2つを行ってください。

  • お腹(おへそのあたり)に軽く手を乗せる ⇒ お腹の風船の動きを確認するため
  • 胸の中心部に手を乗せる(冬のソナタのヨン様スタイル) ⇒  胸部が動いていないか確認するため

その他、携帯のムービーで撮影するなどして確認するのもOKですが、ほんの数センチや数ミリ単位の微妙な動きになることもありますので、細かな動きを上手く捉えるように撮影するのがコツです。

腹式呼吸 やり方 トレーニング方法 練習のポイント

<どうしても胸が動いてしまう方>

以上のような工程を試しても、どうしても胸部が動いてしまう方もいらっしゃると想います。どうしたら良いか?対処法をお教えいたします。
これは多少荒業ですが、

両手で胸部を抱え込んで固定する

歌手のダイゴさんの決めポーズ「ウイッシュ!」を思い出してください。あのポーズを決めて、そのまま腕を抱える様な感じです。

両腕で胸部を抱え込むことで胸が固定されます。そうした上で意識をお腹だけに集中して動かしてみると良いでしょう。徐々に出来るようになるはずです。

<どれくらいで効果が出るか?>

さて、このトレーニングをどれくらい行えば複式呼吸が出来るようになるか?気になるところですね。

1日15分程度でも行えば、2週間程度でお腹だけがスムーズに動くようになるハズです。ただし個人差はありますので、1ヶ月以上かかる方もいるかもしれません。

立ったままでも、お腹を膨らませて呼吸をすることが出来るようになればひとまず完成です。

筋肉運動を身体に覚えさせるためには、何をさておいても「反復練習」しかありません。頭であれこれ考えるより、まず実際にトレーニングすることなのです。

最初は出来なくて辛いかもしれませんが、繰り返すうちに少しづつ出来るようになって行きます。

<トレーニングする際の注意点>

このトレーニングには、少し気をつけなくてはならない点があります。呼吸は人間の生命活動の根源でもあり、やり方を間違えると危険をともなうこともありますので、以下の点に十分注意して行なってください。

10秒程度とした呼吸のスピードは、ゆっくりにする程ボディに負荷がががりますのでトレーニングとしては効きます。しかし、やり過ぎると酸欠状態になり気分が悪くなる事があります。血圧の低い方や、低血糖症の方などは特に注意が必要です。あまり過度にゆっくりやり過ぎるのは危険ですのでおやめください。

10秒程度としたのはあくまでも目安ですので、個々のペースであまり苦しくならない程度に行うことが重要です。

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<最後に>

今回のトレーニングは、腹式呼吸習得の基礎とも言うべきトレーニングです。
またこの方法は、リラックスするための呼吸法としても使えますので、健康にも良いでしょう。

人間の体には、交感神経と副交感神経と言う2系統の神経回路があり、普段の活動は交感神経で行われます。腹式呼吸をすると副交感神経が優位になり、非常にリラックスした状態になることがわかっていますので、高ぶった心や神経を落ち着かせるためにも良い方法です。

私のクラスでは、いつも皆さん笑ってしまうのですが、このトレーニングを始めると必ずお腹が「ポコポコ」「コロコロ」鳴ります。これは、腹筋運動に伴い腸も動かされるためです。女性ではお通じが良くなる効果もある様です。

みなさん頑張って実践してみてくださいね。きっと良い結果になりますよ。