ここ最近、クライアントの持ち込みデータで気になる事があります。
レコーディングエンジニアの音の好みもあるのでしょうが、歌やコーラスにコンプレッサーを過剰に掛け録りした状態で、作り込まれすぎた音になってしまっているケースがよくあります。
ボーカル録音時にコンプを強くかけすぎてしまった場合の弊害
- ボーカル録音の際、コンプを強く掛けすぎると
- 声の奥行き、空間的な広がり感(空気感)がなくなる。(音像が狭くなる)
- ソフトな声の響きがなくなり、固い音になってしまう。
- 歌の抑揚がなくなってしまう。(強く歌ったところは抑え込まれ、弱いところが持ち上がってしまう)
- Auto Tuneなどの音程修正ソフトを使用した時にケロりやすくなる。
等の問題が起きます。
これではボーカルの音作り全般に自由が利かなくなり、ミックスダウンに影響してきます。
- 歌録音の基本セッティングは
- マイク ⇒ マイクプリアンプ ⇒ コンプレッサー ⇒ PC入力(インターフェース)
というのが基本的な流れだと思います。
仮に、コンプを強く掛ける事で歌の音作りに反映させたいのであれば、それはコンプの機種を変える事で構築した方が良いでしょう。当然機材それぞれで音質は異なりますので、曲調やイメージに近い物を選ぶのがベターです。
また音質作りはどちらかというとマイクプリのEQなどの設定で行う方が、初心者には間違いはないでしょう。
もちろんコンプの各設定で音質は変化しますし、そこがエンジニアの腕のみせどころです。しかしその『さじ加減』が難しいのです。
「レコーディング(ミックス)はコンプに始まりコンプで終わる。とても奥が深い。使いこなすには何年もかかる」
と私の友人でもある某有名エンジニアM氏は言っている程です。
それくらいコンプレッサーは扱いにくく慎重を要し、掛け方ひとつで良くも悪くも左右します。
歌録りの際のコンプレッサーの役割は?
このようにコンプレッサーは他のエフェクトに比べ、音の変化も大きく実感できるため、過剰な設定はなるべく避けた方が良いと思います。
歌録りの際は、最大ピーク時に少し掛かるくらいのデリケートな設定が好ましいです。
言うならば、音に変化をつける為のエフェクトでなく、
- ボーカル録音時のコンプレッサーの役割
- 最大ピークを少しだけ押さえるためのリミッター的なもの
と考えてもらっていいと思います。
コンプレッサーがガチッと掛かっていると、パッと聞きは録り音も太く安定感があるように感じます。しかし冒頭で話した通りミックスダウンの時にどうしようも出来なくなり、最悪は録り直しなんて事にもなりかねません。
逆に歌が引っ込んで聞こえたりすることもあります。
ナチュラルな音で録っておけば、後から深く掛ける事も出来ますので、歌録りの際のコンプレッサーの設定には特に気をつけて頂きたく思います。