昨日の【歌を録音する際の『ヘッドホン音量』に注意】では歌をレコーディングする際にヘッドホンボリュームを大きくし過ぎると、音程が低くなる傾向にあることについて述べました。
それ程レコーディングする際のモニターシステム(ヘッドホンから流れる音)はとても重要です。
今日はプロのレコーディング現場で使われている業界標準のヘッドホンとキューシステムについてお話ししたいと思います。
スタジオ標準のヘッドホン【MDR-CD900ST】
ご存知の方も多いと思いますがプロの現場では、ソニーとソニー・ミュージックスタジオが協同開発した完全プロ仕様の『Sony | MDR-CD900ST』というヘッドホンが使われています。
日本のスタジオのほとんどがこのヘッドホンを使っているといっても過言ではないでしょう。
音質的には少し硬めの音ですが、ミュージシャンが音を聴きとりやすいように、音の輪郭が明瞭で分離が良いです。またスタジオや放送局での過酷な使用を考慮して耐久性・安定性があります。
ではこのヘッドホンの音質が、民生機のSENNHEISERやAKG、STAXなどの高級ヘッドホンと比べてどうかと言いますと、好みにもよると思いますが決して勝っているとは私は思いません。
あくまで音楽を聴くという目的だとSENNHEISER(ゼンハイザー)やSTAX(スタックス)のヘッドホンの方が私は好みです。
ですから私はミックスダウンのチェックなどではSENNHEISER HD580を使用しています。(もう十数年前に買ったものなので旧モデルです)
レコーディングエンジニアはミックスチェックの一環として、このMDR-CD900STを使う方も実際には多いですが、最近ではSENNHEISERを使う方を良く見かけます。モデル的には売価が手頃になってきたSENNHEISER HD650が多いように感じます。
ただこれらのゼンハイザーのヘッドホンは『オープンエア型』なので、ボーカリストやミュージシャンが録音ブースに入って使用すると、音が外に漏れてしまいますので、やはりレコーディングする場合は『密閉型』のヘッドホンが必要になります。
録音時のモニターとして、基準となる音作りがされている『密閉型』Sony | MDR-CD900STはボーカリスト・ミュージシャンには重宝されるているヘッドホンと言えるでしょう。
キューボックスはCURRENTが多い
日本のレコーディングスタジオで使われているキューボックスの代表的な存在はといえばCURRENT(カレント)があげられます。
【SC6014】や【SC8016A】はほとんどのスタジオで使用されています。
音質的にはCURRENT独特のジリジリした高音特性もありますが、やはり使いやすく良く出来たキューシステムだと思います。
私の好きな、Sony Music Studioオリジナルキューシステム
上記に書いた通り、ヘッドホンSony | MDR-CD900ST とCURRENTのキューボックスは高音部にやや癖があるので、この2つを組み合わせると、高域がきつい印象があるのも否めないのは確かです。
しかしソニーミュージックスタジオが独自に開発したキューシステムがあるんですが、これは本当に素晴らしい音をしています。
聞くところによると、このキューボックス【CSM-2000】は、ヘッドホンSony | MDR-CD900STに合わせて音質をチューニングしているそうです。
ですからソニーミュージックスタジオで聞くMDR-CD900STはとても聞きやすく、良い音をしているんですね。
ヘッドホン特有の固いシャリシャリ気味の音が、このキューボックスを通して聴くととてもナチュラルで、長時間聴いていてもまったく耳が疲れません。
MDR-CD900STに限らず、ゼンハイザーHD580やHD650を通しても素晴らしい音質で、どんなヘッドホンでも聴いても、定位感や高音部・低音部の伸び、奥行き感があります。
それが変に作られた音ではなく原音に忠実で、しかも高級感のある音質です。
このSony Music Studioオリジナルのキューボックスは残念ながら一般はもちろん、業務用としても発売はしていません。もし売るとしても部品など良いものを使っているらしく、とてもお金がかかっているそうで、相当高額になるということです。
もし売ってもらえるなら私も欲しいんですが、手が出ませんね。そもそもシステム自体も相当大がかりなものになるそうで、広いスタジオでないと設置も難しいらしいので、それも含め無理ですね。