ボイストレーニングの基礎的なトレーニングに、リップロールという方法があります。

名前の通り、唇をロールさせるこのトレーニング、最近ではネット上でも多く紹介され、かなりポピュラーな方法なので、ご存じの方も多いと思います。

具体的には

リップロールとは
唇を閉じた状態で空気を排出し、唇をブルブルと震わせながら行う練習方法です。

言葉で書いてもイメージしづらいと思うので、一例を音源にアップしておきます。

≪リップロール音声≫
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どうしてこんなにポピュラーになったのでしょうか?それは、

ボイトレで正しい発声を身につけるための練習方法として、リップロールが理にかなっており、克つ効率的にトレーニング効果を生むから他なりません。

リップロールはそれひとつで様々な部位のトレーニングになります。いくつか言われておりますが、大きく分けて4つあります。

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リップロールで得られるトレーニング効果

  1. 唇や表情筋のリラックス
  2. 音程を正しく取るトレーニング
  3. 横隔膜のトレーニング
  4. 裏声と地声を滑らかに繋ぐトレーニング

1. 唇や表情筋のリラックス

歌う上でとても重要なことは、「リラックス」です

心も含め各部位が適度にリラックスしている状態が一番良い状態です。喉や首周辺だけではなく顔面も同じです。

特に唇のリラックスは大切になります。20種類以上ある表情筋の中で、笑筋や口輪筋、頬筋など唇のまわりの筋肉を刺激しリラックスさせる効果もあります。

※表情筋については以下の図をご参照下さい。

表情筋の図

2. 音程を正しく取るトレーニング

音程は声帯のヒダが収縮する微妙な動きで作られます

さらに、音程は口腔内の形や唇の形ではなく、あくまで声帯のみで作らなければなりません。リップロールで音程を上下する時、動くのは必然的に声帯のみになります。

結果的に、声帯だけで音程を作る基礎的なトレーニングになります。

くちびるのブルルを維持しながら、音程を上げ下げするというのは、普通に声を出して行うより神経を研ぎ澄ます必要があり、それを繰り返すことで、声帯の開け閉め、つまり音程の細かいコントロールが出来る様になります。

また、口を閉じてリップロールする事で、発声音の骨伝導率が高まり自分の音を良く認識することが出来ます。

自分の音を正確に知ることこそ、音程をコントロールする上で一番重要なことです。

3. 横隔膜のトレーニング

リップロールは空気の吐き出す量が一定、もしくは滑らかな増減でなければ止まってしまいます。

そのためには、腹式呼吸により横隔膜を使いスムーズに空気量を調節する必要があります。

リップロールを行っている時は、通常の発声より空気の流れが阻害されています。(唇を閉じてその隙間から空気を押し出すため)

この時、排出空気の量を調整する横隔膜に多少の負荷がかかります。これにより、横隔膜が鍛えられ、滑らかな空気の排出が可能となります。

4. 裏声と地声を滑らかに繋ぐトレーニング

リップロールでも発声は唇が閉じている分、大きな音が出ません。口を開けての発声とは違い、必然的に「自然なボリューム」に収まります。

裏声(ファルセット)も地声よりは音圧が低い(ボリュームが小さい)ので、地声から裏声へのチェンジが滑らかに行えます。

無理なく滑らかにチェンジを繰り返す事で、声帯のヒダのスムーズな動きを習得することが出来ます。


以上4つの要素を持ち合わせたリップロールは非常に効率的で克つ効果的なトレーニング方法と言えます。

リップロールの具体的なやり方については、次回のブログでコツなど含め詳しく説明をしたいと思いますが、さわりだけ少し。

  1. まずは、唇を軽く閉じます。
  2. 空気を吐きます(この時、音は付けない)まずは、空気だけで行う。
  3. 唇が高速で開いたり閉じたりし、「ブルル」と音が出ます。
  4. 音と音階を加える(「ブゥ~」と言うつもりで)
  5. ドレミファソファミレドを行う。

ボイストレーニングで正しい発声の基礎を身につける上で、リップロールは非常に有効で、プロの現場でも手軽で効率の良いウォーミングアップ方として認められています。